情報知能工学専攻
博士後期課程1年
材料工学専攻
博士後期課程1年
物質創造工学専攻
修士課程2年
化学工学専攻
博士後期課程3年
機械工学専攻
博士後期課程2年
航空宇宙工学専攻
博士後期課程2年
量子物理工学専攻
博士後期課程1年
船舶海洋工学専攻
博士後期課程3年
建設システム工学専攻
博士後期課程2年
空間システム専攻
博士後期課程3年
園田:私は昨年1年間、積極的にいろいろな高校を回って九州大学工学部の魅力をアピールしてきました。そこでも感じたことですが「自分は医者になる」という明確な目標がある医学部は別として、工学部は理系の中の選択肢の1つでしかないという感じで、強い目的意識を持って入ってくる学生さんはあまり多くありません。そこで、まずはみなさんが九州大学工学部を選んだ理由を教えてください。
龍園:九州大学を選んだのは、親が鹿児島にいるので何かあってもすぐに帰れるように、という理由です。もともと勉強が好きだったので、工学部なら就職しやすいのかなというくらいの考えでした。
藤木:僕は中学卒業時から機械系の仕事に就くと決めていて、中学校の卒業文集の将来の夢にも「機械系の仕事に就く」と書いていたくらいです。地元が福岡ということもあって九州大学の機械工学専攻を選びました。
本田:私は高校時代から勉強は苦手だったのですが、化学だけは面白くて、将来は化学を中心に何かやっていけたらと思っていました。化学を学ぶにも理学部と工学部の2つの学部がありますが、いろいろな先生に相談すると「工学部の方が社会に近いし、自分が作ったものを売るようなこともできる」と言われて工学部を選びました。九州大学にしたのは近かったからです。
河原:自分も就職のしやすさを考えて工学部を選びました。兄からも「理学部の友人は就職に困っているけど、工学部は困らない」と聞いていたのもあります。
辻 :僕はみなさんとちょっと経歴が違うのですが、高専に通ってから九州大学に来ました。高専に進んだのは、普通の高校より誰よりも早く専門が学べると思ったからです。高専時代に研究の面白さも知りましたし「もっと人脈を広げないと将来活躍できない」と思って、レベルの高い九州大学を目指してきました。
足立:僕も高専出身です。高専に行ったのは中学時代の友人に誘われたからですが、そこで工学の分野も面白いなと思えるようになりました。高専では電気情報よりの内容を学び、電力会社への就職も考えたのですが、中学時代に起こった東日本大震災における原子力発電所の事故を見て,原子力を学びたいと思いました。九州大学を選んだのは、原子力系の分野を学べるからです。
上村:日本は海洋国家でもあるので海洋関連の仕事に就ける大学を探しました。自分の出身が三重県なので大阪大学が一番近かったのですが、九州大学のオープンキャンパスに来た時にまだ新しかった伊都キャンパスに最新の設備があって、研究をするならここだと思いました。
園田:資源とか海洋といった分野は、旧帝大ですでになくなったところも少なくないので、その点は九州大学工学部の強みとも言えるのでしょうね。
安部:私はもともと理学部にするか工学部にするかを高校3年生まで悩んでいました。学科を調べていく段階で、最終的に自分がやった仕事が社会に還元できる方が魅力的だなと思って工学部を志望しました。高校時代から化学に興味があったので工学部で化学を専攻できる物質化学工学科を選びました。
園田:ここまでのお話で理学部と工学部の違いが出てきましたが、理学部は純粋な学問ですよね。工学部は最終的に社会に還元できるところまでいかないといけないので、そういう点に魅力を感じてもらったのはうれしいですね。
園田:では、次の質問です。みなさんは九州大学工学部に来て良かったと思えるのはどのような点ですか。
龍薗:入ってみるとやりたいことを明確に持っている友人が多かったです。そのような友人を「かっこいいな」と思うと同時に、自分も航空の分野で学問を究めたいと思うようになりました。いろんなものに挑戦しようと『PLANET-Q』というロケットのサークルに入ったのですが、創造工房という形で大学に支援していただいているのも工学部の良いところだと思います。
園田:確かに同級生の存在は大きいと思います。刺激しあうことが大事ですよね。
安部:入ってみると選択肢がたくさんあって、自分の興味があるものをちょっとずつ研ぎ澄ませていくことができていると思います。先生方もたくさんいらっしゃるので、その分選択肢が豊富という点が工学部の魅力だと思います。あと、工学部が支援している短期留学プログラムELEPに参加したのですが、海外にあまり興味がなかった私でも気軽に参加できたのは良かったですね。
園田:九州大学には本当にたくさんの選択肢があると思います。例えば,学部の数を比較すると日本の国立大学で12学部あるのは北海道大学、広島大学、九州大学の3校だけで、東京大学でさえ11学部です。
ジ :私は人工知能の研究をしていますが、中国では人工知能を学んでいるのは女性が多いので、日本に来て工学部に女子学生が少ないことに本当にびっくりしました。中国では先生が厳しかったのですが、日本の先生はいろいろと指導してくださり、ダメなところも「そういうのはダメだよ」と優しく言ってくださるので、勉強がとても楽しいと思えるようになりました。
園田:工学部に女子学生が少ないことは私たちも悩んでいます。実はこの10年、九州大学工学部の女子学生の割合は常に10%程度で変わりません。その理由としては、日本の学生さんは、高校生になった時点で既に固定観念に縛られていることなどが挙げられます。高校で、理系・文系に分けられる際に数学に少しでも苦手意識があると「理系は無理」とされているところがあるんでしょうね。この固定観念を変えていかないと、これからも変わらないでしょう。中学生の時から、工学にはこういう分野があり、こういう魅力があると具体的に伝えていくことが大事だと思います。高校によっては3年生になってから理系、文系を分けるところもありますが、殆どの高校は入学して半年程度過ぎた時点でコース分けするところが多いので、その時点で理系コースに女の子が少ないという現状があるようです。現実には、工学部で学んでいる女子学生を見てみると、几帳面に勉強されるので教室内での成績は優秀な子が多いですよ。
西山:建築は工学部の中でも定員が少ないので、それが丁度いいサイズだと思っています。同級生がどういうことに興味があって何をしているのかも、全体像としてだいたい把握できます。刺激にもなるし、仲もいいです。
園田:続いては、みなさんが現在所属している研究室を選んだ理由について聞かせてください。
藤木:僕は指導教員の先生が厳しいところを選ぼうと思っていました。今やっているのがロボットの研究で、もともと興味があった分野の研究がやれているので満足しています。
ジ :私は中国からネットで探しました。他の大学のホームページも見たのですが、今の研究室のホームページが一番かっこよかったので選びました(笑)。高校生にもわかるようなホームページを作ることも大事だと思います。
辻 :僕の研究室ではスーパーコンピュータなどの大型計算機を使うのですが、単にそれがかっこいいなと思ったからです。
河原:僕は先生で選びました。いろいろな先生の授業を受けて、必死に勉強してテストでいい点を取ろうと頑張ってきましたが、どの先生の授業で学ぶことが多かったかなと考えて今の研究室を選びました。
足立:先生の集中講義は内容がすごく面白くて。もともと原子力の中でも僕が一番やりたかったのが核廃棄物の処理だったのですが、通常とは別の処理方法を研究されている点が自分の中でマッチしたというのが理由ですね。いずれ社会で使われるようになればいいなと思っています。
園田:みなさんがこうして博士課程まで進まれていること自体が、それぞれの研究室に満足されている証拠だと思います。ところで、どうして博士課程まで進もうと思われたのでしょうか。ご家族からすれば、就職面や経済面も含めて心配されたと思いますが、みなさんの意識をお聞かせください。
上村:博士課程の3年間は、いい意味で考えれば充実した研究ができる期間だと思います。就職して社会人博士課程として取ることもできますが、私が見るところでは、みなさん本来の会社の業務がお忙しいので、研究は学生にお任せという方が多いように思います。修士を終えて博士課程に進むことで時間的なしがらみもなく、企業との共同研究でも(学生として)アカデミックな立場で質問ができることも強みだと思います。
龍薗:博士課程に進んだ一番の理由は研究が面白かったからです。自分が知らなかったことを知る学問の面白さを学部4年で感じました。特に卒業論文の序論を書いている時に、今までの先行研究からの流れがあって、それが今の研究に繋がっているということを知ることができて面白さが増しました。それが博士課程に進んだきっかけです。博士課程に進むにあたっての一番の不安は金銭面でした。実家がそれほど裕福ではないので、経済的には完全に独立すると親に約束して進学したのですが、指導教員の方にもサポートしていただいて現在に至っています。
本田:私の進学理由の一番は自分が成長できると考えたからです。学部、修士での研究はどちらかといえば受動的な研究でしたが、博士課程では企画から自分でやってプレゼン力とか文章作成力が求められることもあって、その点で成長できるなと思いました。同期の9割は修士で卒業しましたが、将来的に少しでも上の位置にいたいというよこしまな気持ちも少しあります(笑)。
藤木:博士課程への進学を決めたのは、修士1年次から2年次に変わる時でした。それまでは修士を終えて就職する気持ちが強かったのですが、博士課程に進めば僕が就職しようと思っていた企業さんと共同研究ができるぞと指導教員の方に言われました。就職してよくわからない上司からその道のことだけを学ぶより、大学に残って行きたい企業の情報を知りつつ、僕のことをよく理解してくれている指導教員の方からより深い知識を得た方がいいと考えたのが理由です。親が博士課程に対する理解があったことも大きかったです。
辻 :僕も研究が好きだったことが一番です。同期が就職して取り残された不安はありますが、博士課程の3年間を頑張って就職すれば競争率も下がるし、そこで頑張れば周りよりもちょっと前に出ることができるかな、と思っています。僕は教員になりたいという思いがあります。研究をしながら研究室を持って教育もしてとなると、やはり博士課程を卒業しておかないと無理だろうと考えています。
園田:日本国内で就職しようとすると博士課程は不利だと言われています。ところが海外ではドクター(博士課程卒)を持っていないとダメだというところが多いのです。それを若い人たちが意外と知らないんですよ。
河原:研究室の先生に相談したのがきっかけで(博士課程)進学を決めました。博士課程を経て就職して年収が上がったり、良いポストに就けることはないかもしれないけど、自分が好きな研究ができる人生で最初で最後の3年間だと言われて決意しました。
ジ :中国では「ドクターが欲しい」という企業がほとんどです。私の両親はどちらもドクターを持っていて大学の先生をやっているので、小さい頃から(博士課程に)行きたかったら行けるという環境にありました。海外の人から見るとドクターは賢くてかっこいい存在だと思います。
西山:私は修士を終えて設計事務所に4年間勤めてから大学に戻ってきました。設計をするにしても論文を書くにしても過去の参考事例を当たるわけですが、過去の研究を読むことでそこからオリジナルの発想ができ、設計よりも研究の方が自分には向いているのかなと思って戻ってきました。
足立:私は現在の研究室の研究内容に興味があったからですね。最初は修士で終えて就職しようかなと考えましたが、修士の2年間では中途半端なところで終わるだろうなと思ってもう少しやろうと思いました。学生なのでやりたいことを自由にやれるというのもあって、そういう時間を大切にしたいと考えています。
安部:私はこの3月まで就職活動を行ってました。3月に第一志望の企業から内定をいただいたのですが、修士になって始めた研究テーマがあと1年で終わらないなと思って。与えられたものではなく自分の希望も入って始めた研究テーマなので、愛着もあって何とか形にしてから卒業したいと考えて博士課程に進むことにしました。研究室の先生方のサポートもあり、また親も「どうせ65歳まで働くのなら(博士課程の)3年間なんて誤差の範囲」と言ってくれました。
園田:今日は貴重なご意見をたくさんいただくことができました。みなさんが強い意志を持って、博士学生としての研究活動に勤しんでいることを知り、大変嬉しく思います。
これからも研究にしっかり励んでください。ありがとうございました。