狭い国土を海洋に囲まれた我が国の将来の発展は,交通運輸・生活空間確保および資源調達に際して,海洋の有効利用を抜きにしては考えられません。交通運輸に関しては,既存の海上交通手段のみでなく,飽和した陸上交通の補完およびウォーターフロント再開発に伴う新アクセス手段として,沿岸航行を主とした新しい海陸総合交通システムが有効です。一方,空間確保の面では,浮体空港・海洋発電所などの作業空間,あるいは客船・海洋レジャー施設などの快適空間の創出などが具体化しています。また,海中資源の探査または採掘に伴う海中運搬技術・機器運行制御技術などの周辺技術も不可欠であり,この方面のさらなる開発が強く望まれています。本専攻では,以上のような社会的要請に応えるため,世界の造船技術の継承発展を図るとともに,新しい海洋利用産業を担う人材の育成を図り,海と人間の新しい関係を築くことができる社会を探求することを目指しています。
船舶海洋工学は,1)交通・輸送・機能,2)エネルギー,生物,および鉱物資源の生産機能,3)居住や備蓄のための空間機能など,海洋がもつ社会的・経済的に有用な機能を発展的に活用するために必要な技術を開発し,研究する学問です。本専攻での就学を目指す修士課程の学生には,以下のことが期待されます。
船舶海洋工学に関連する幅広い技術を学ぶためには,基礎的な学問に関する知識とともに,全体的な視野に立って物事をまとめあげる能力が要求されます。そこで,本専攻においては,構造,流体,熱,材料,制御などの工学を学ぶと同時に,巨大な船や海洋構造物を実際に設計・建造するためのシステム工学を身につけられるようなカリキュラムが編成され,各種の実験装置も整備されています。また,船や海洋構造物の計画・設計,生産管理にはコンピュータが全面的に利用されていますので,プログラミング言語,数値解析・シミュレーションに関する教育も取り入れられています。本専攻は以下の9つの専門分野から構成されています:1)船舶海洋流体工学,2)船舶海洋運動制御工学,3)構造システム工学,4)生産システム工学,5)機能システム工学,6)船舶設計・海洋環境情報学,7)海洋エネルギー資源工学,8)構造動力学,9)システム計画学。
本専攻での代表的な研究課題は以下のとおりです:遺伝的アルゴリズムを用いた自動設計,船体及びプロペラの流力性能最適化手法の開発,船舶の自動航行システムの開発,船舶および造船のリスクアセスメントに基づく安全設計法に関する研究,船殻構造の最終強度計算,メガフロートの挙動解析,数値破壊力学に基づく疲労寿命評価方法の開発,人工衛星情報に基づく長期波浪統計データベースの構築等。
実験施設として高速回流水槽,船舶運動性能試験水槽,200トン構造物試験装置,疲労試験機を保有しております。